鉄道愛好家の諸兄の中には車両の前面のいわゆる"顔つき"が気になる方は少なくないと思われます。 恐らくミス××コンテストよろしく人気投票を行ったとすれば、順位がつくことでしょう。 中には普段、車両を眺めては"もう少し窓の位置が・・・だったら、もう少しカーブが・・・だったら。"と思われた方はいらっしゃるのではないでしょうか? では美人の条件よろしく、鉄道車両における"好ましい顔の条件"とは? そんなことを考えながら、鉄道車両の"顔"のイラストを描き始めました。 その作業は車両の写真を見ながら正面図を描き直すという、図面から車両が制作されるのとは逆の過程を辿るものです。 この作業を通してあらためて実感したのは、その車両を手がけた設計者が図面に引いた一本一本の線が良くも悪くもその"顔つき"を決めてしまうという、当たり前の事実です。 彼らはどのような思いで線を引いていったのでしょうか? "全幅は××mm、全高は××mm以内、貫通扉を有し、幅は××mmとする。"といったように鉄道会社が指示する機能・要件がありますので、大方、"顔の輪郭"ぐらいは決まってしまいます。 それでもなお、様々な"顔つき"が生まれるのは設計者には"目鼻"の体裁を整え、更に自らの好みを反映できる余地が残されていたからだと思われます。 締め切りに追われて機能・要件を満たすだけで精一杯だったのでしょうか? それとも自分なりに満足のいく心配りが出来たのでしょうか? 製図板に向かいながら溜め息を一息つく設計者の姿が目に浮かんでくるのでした。
時代と共に鉄道車両の"顔つき"も変わってきました。 例えば1950年代後半に生まれた車両はガラス窓をHゴムで支持する方法がとられるようになりました。また従来の木製・鉄製窓枠で登場した車両も後の更新の際にHゴム支持化された車両も多く見られました。Hゴム化の更新工事に際してあらためて体裁が整えられ、一層魅力的な顔つきになった車両もいれば、工事の簡略化や規格品、余材料の使用を余儀なくされてせっかくの美男美女が見るも無残な顔つきになった例もあったでしょう。 |
亀甲デザイン研究所 |
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